記録-GN001

今日は外からの来客がありました。

彼の体は硝子で形成されているようです。体には微細な気泡が含まれており、それらが陽の光を受けて白く光っていました。
彼が言うには、彼のいた世界では全ての物質が硝子でできており、どれも脆く透明なのだそうです。先日そこで硝子製の月と太陽が衝突してしまい、粉々になってしまう事件が起こりました。彼の右目に刺さった大きな破片は、その時に砕け散った月の成れの果てなのです。
「おれには必要ないものだから、欲しいならやるよ」と彼が言うので、私は月の欠片を譲り受けました。可能であれば彼の体をより詳細に検査してみたかったのですが、断られました。

硝子製の月の欠片は複雑に光を反射し、とても美しく輝いています。

記録-GN002

鳥捕りが来て、白鷺を置いていきました。

白鷺は植物園でくつろいだ様子でしたが、散水機の水に当たって片脚が溶けてしまいました。どうやら白鷺の体は砂糖でできているようです。白鷺の脚が溶け込んだ砂糖水から氷砂糖の花が咲き、蜂が盛んに飛び交っています。

後ほど、飴細工の手順で脚の修復を試みようと思います。

記録-GN003

脚を修復する前に白鷺は飛び去っていきました。

記録-GN004

以前漂着した翡翠の置時計に関する追記です。

置時計はひとつの翡翠の塊から削り出された彫刻で、時間を示す機構は備わっていないようです。時計というよりは置き物と呼ぶ方が適当かもしれません。その他の情報に関しては漂着日の記録に記載しています。

漂着以来時計は常に10時17分を指したままでしたが、226年と29日目の今日、針が10時18分に移動していることを確認しました。

記録-GN005

列をなして進んでいく狼の群れを観測しました。どの個体もヴェールで頭を覆っており、時折群れの一部が回転しています。その目的は不明ですが、繁殖に関わるディスプレイ行為かもしれません。

昨日同時刻に現れた、シルクハットを被った羊との関連性については一考の価値があるように思います。

記録-GN006


夜の季節にはトビウオムシが頻繁に飛来します。強い正の走光性を持っており、施設の照明に引き寄せられているようです。

トビウオムシの形態は水棲生物に酷似していますが、生息圏は空中に限られているらしく、海中に落下したトビウオムシが溺死する事象を確認しています。